[エピゲノム入門]2-2. 染色体・DNA・塩基・遺伝子・ゲノム

エピゲノム入門

この節から学ぶこと

・染色体・DNA・ゲノム・遺伝子について
・細胞を拡大すると染色体、DNA、塩基の順に見えてくる
・遺伝子は、タンパク質の設計図が暗号化されている塩基の並び順のこと
・ゲノムとは「すべての遺伝情報」という意味

細胞を拡大して見ていく

ここから先は、遺伝子、DNA、ゲノムなど、似たような意味の言葉が多く出てきます。どれも一度は聞いたことのある用語かもしれませんが、これを機にそれぞれどういうものなのか、理解しておきましょう。

今回は、細胞を少しずつ拡大していき、最初に染色体DNA塩基を見ていきます。そのあとで、遺伝子とゲノムについて解説します。

染色体からDNA、そして塩基へ

細胞の中には「核」というものがあります。この中にDNAが入っているのですが、まずは少しずつ拡大して見えるものから見てきましょう。

DNA

細胞の核の中には「染色体」というものがいくつか(ヒトの場合は44本)入っています。細胞を薬品に漬けると、染色体には色が付いて見えるようになるので、そう呼ばれています。肉眼では見えませんが、中学校の理科の実験で光学顕微鏡を使って見た覚えのある人はいるかもしれません。

染色体

【DNA】

図のように、 染色体はほどいて行くと結局は1本のDNAです。
細胞核の中には複数の染色体(ヒトでは44本)があり、それぞれが1本のDNAです。DNAは細いひも状の物質(直径2ナノメートル、長さ数センチメートル)です。それが、糸巻きのような形のヒストン(直径10ナノメートル)に少しずつ巻き付いたものの連なりになっています。その連なりがらせん状に巻いて太く(直径30ナノメートル)なって、さらに折りたたまれて染色体(直径1000~2000ナノメートル)になっているのです。(実際には、この形状になっているのは細胞分裂をするときです。)

【DNAの塩基配列】

DNAは細くて長いひも状の物質ですが、詳しく見ると2重らせんの形をしています。2重らせんの2本の糸の間に、「塩基」が2つずつペアになって並んでいます。その数、ヒトなら約60億個。1つの細胞のDNAの中に、約60億個の塩基が並んでいます。ここで並んでいる塩基は、A・T・G・Cの4種類のどれかです。

DNA

遺伝子:タンパク質の設計図の情報

【タンパク質の設計図は塩基配列】
タンパク質は20種類のアミノ酸が並んでできています。
どのアミノ酸がどの順番に並んでいるかがタンパク質の機能を決めています。この順番を指定する情報(設計図)はそのタンパク質のための遺伝子にあるわけですが、その情報はDNAのその遺伝子の部分の塩基の並び方で表されているのです。

逆に言うと、DNAのある部分があるタンパク質の作り方を示す遺伝子に相当し、その部分の塩基配列がタンパク質のアミノ酸配列を表しているのです。タンパク質を合成するときには、この塩基配列の情報を参照しながら正しいアミノ酸をひとつずつつないでいます。

DNAのある部分の塩基の並び(遺伝子)には筋肉にあるタンパク質「ミオシン」を作るための情報があります。また、別の部分の塩基配列の並び(遺伝子)には、赤血球にあるタンパク質「ヘモグロビン」を作るための情報があるということです。

タンパク質の設計図つまり遺伝子は、ヒトの場合で2万個ほどで、DNAの中で占める割合は1.5%ほどと言われています。

DNAのそれ以外の部分は、タンパク質の設計図つまり遺伝子ではありません。しかし、遺伝子の働きを制御したり助けたりその他の重要な役割をになっています。

DNAの一部が遺伝子

ゲノムとは「すべての遺伝情報」という意味

最後に、ゲノムという言葉を解説します。

ゲノムとは「すべての遺伝情報」という意味です。DNAが塩基などから成る「物質」であるのに対して、ゲノムはそのDNAの塩基配列のすべてを読み取った結果の「情報」です。具体的には、A・T・G・Cの文字が並んだもの(情報)になります。

ゲノムはDNAの「すべて」を読み取った情報ですから、DNAのうちの遺伝子の部分の情報と、遺伝子以外の部分の情報の両方が含まれます。つまり遺伝にかかわる全情報であり、ある生物の細胞核の中にある全部のDNAの塩基配列すべてを読み出した全情報です。細胞核の中には複数の染色体(ヒトでは44本)があり、それぞれが1本のDNAです。

ひとつひとつの遺伝子に注目して解析するやり方もありますが、その生物のすべての遺伝子さらに遺伝子以外の部分も加えての、DNAすべての情報を合わせて解析できるようになりました。この、DNAすべての情報を、「ある生物がもつすべての遺伝情報」という意味として「ゲノム」という言葉で呼んでいます。

ここまでの内容をまとめると、

  • 染色体: 顕微鏡で見える。DNAが巻かれて折りたたまれて形作られているもの。
  • DNA : 2重らせんの間に塩基が並んだもの(塩基配列)
  • 塩基: A・T・G・Cの4種類がある。
  • ・遺伝子: タンパク質を作るときのアミノ酸の順序を指定する情報。DNAの塩基の並び方で表されている。
  • ・ゲノム: ある細胞のDNAすべての情報。塩基の並び方で表されている。

ただし、これらの言葉の意味は、狭義・広義、古典的・現代的など場合によって変わります。

DNAと塩基配列
染色体をほどいてゆくとDNAになる

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