ここまでエピゲノムの仕組みや応用例について解説しました。
「クロマチン構造の変化とRNA合成」で述べたように、エピゲノムのメカニズムのうち重要なのは以下の2つです。
エピゲノムを調べる効果について、例を考えてみましょう。
ある薬剤与えた細胞と与えなかった細胞を用意してその両方のエピゲノムを調べて比較すれば、その薬剤がどの遺伝子の発現にどう作用するのか、エピゲノムの観点から理解できるようになります。
そのためには、どのヒストンのどこが修飾されているのか、DNAのどの部分がオープンクロマチンになっているのか、DNAのどの部分が修飾されているのかを調べることになります。
この章では、エピゲノムを調べる手法について簡単に紹介します。
エピゲノムの解析は標準的には下記のような流れになります。
最初に紹介するのは、ヒストンの修飾(アセチル化やメチル化など)を調べる手法です。
ヒストンの修飾は遺伝子発現と関係します。例えば、ヒストンがアセチル化されたところはオープン・クロマチンになりやすく、RNAに転写されやすい、つまりDNAのその位置の遺伝子が発現しやすい状態にあります。
そこで、アセチル化されたヒストンだけと結合する物質(抗体)を用意します。この抗体を使えば、アセチル化されたヒストンを見つけることができます。このヒストンがDNAのどの位置にあるかを調べれば、発現しやすい状態になっている遺伝子がわかります。
上記のようにしてヒストンのエピゲノムを調べる方法は「クロマチン免疫沈降法」といいます。
この方法には、
などがあります。
また、 クロマチン免疫沈降法ではない方法として、
があります。
DNA自身のメチル化を調べる方法はいくつかあります。
しばしば用いられる方法は「バイサルファイト(BS)処理」というものです。
この処理を行うと、
メチル化されたシトシンはそのまま、
メチル化されていないシトシンは「ウラシル」という別の塩基に変化します。
これを利用して、ウラシルに変化したかどうかで、その場所のシトシンがメチル化されたかどうかを調べるのです。
実際には、
などの様々な手法があります。
さらに、ゲノム全体を網羅的に調べる方法として
があります。こちらもChIPと同様、調べる範囲や精度に合わせて手法を使い分ける必要があります。