[エピゲノム入門]4. エピゲノムの解析法

この節から学ぶこと

  • エピゲノムの具体的な解析方法を知る
  • ヒストンのエピゲノムの解析方法に「ChIP-seq」や「ChIP-qPCR」がある
  • メチル化DNAの解析方法に「バイサルファイト処理」がある

エピゲノムを調べる

ここまでエピゲノムの仕組みや応用例について解説しました。
「クロマチン構造の変化とRNA合成」で述べたように、エピゲノムのメカニズムのうち重要なのは以下の2つです。

    •   ヒストンの修飾
    •   DNA自身の修飾
      (修飾: アセチル化やメチル化など)

エピゲノムを調べる効果について、例を考えてみましょう。
ある薬剤与えた細胞と与えなかった細胞を用意してその両方のエピゲノムを調べて比較すれば、その薬剤がどの遺伝子の発現にどう作用するのか、エピゲノムの観点から理解できるようになります。

そのためには、どのヒストンのどこが修飾されているのか、DNAのどの部分がオープンクロマチンになっているのか、DNAのどの部分が修飾されているのかを調べることになります。
この章では、エピゲノムを調べる手法について簡単に紹介します。

エピゲノムの解析の流れ

エピゲノムの解析は標準的には下記のような流れになります。

    1.   細胞からDNAを取り出す
    2.   DNAに化学的な前処理を行う
    3.   DNAの塩基配列をシーケンサーで読み取る
    4.   1次解析を行う
    5.   2次解析を行う

ヒストンのエピゲノムの解析法

最初に紹介するのは、ヒストンの修飾(アセチル化やメチル化など)を調べる手法です。

ヒストンの修飾は遺伝子発現と関係します。例えば、ヒストンがアセチル化されたところはオープン・クロマチンになりやすく、RNAに転写されやすい、つまりDNAのその位置の遺伝子が発現しやすい状態にあります。

そこで、アセチル化されたヒストンだけと結合する物質(抗体)を用意します。この抗体を使えば、アセチル化されたヒストンを見つけることができます。このヒストンがDNAのどの位置にあるかを調べれば、発現しやすい状態になっている遺伝子がわかります。

上記のようにしてヒストンのエピゲノムを調べる方法は「クロマチン免疫沈降法」といいます。

この方法には、

  • 「ChIP-seq(チップ・セック)」:すべてのゲノムのヒストンの変化を網羅的に調べる方法
  • 「ChIP-qPCR」:特定の遺伝子に限定して調べる方法

などがあります。

また、 クロマチン免疫沈降法ではない方法として、

  • ATAC-seq(アタック・セック)」:RNAに転写されやすいオープン・クロマチンの領域のみの塩基配列を解析することによって、オープン・クロマチンがDNAのどの位置にあるかを調べ、それによって発現しやすい状態になっている遺伝子を知る方法

があります。

DNAのエピゲノムの解析法

DNA自身のメチル化を調べる方法はいくつかあります。
しばしば用いられる方法は「バイサルファイト(BS)処理」というものです。

この処理を行うと、
メチル化されたシトシンはそのまま、
メチル化されていないシトシンは「ウラシル」という別の塩基に変化します。
これを利用して、ウラシルに変化したかどうかで、その場所のシトシンがメチル化されたかどうかを調べるのです。

実際には、

  • 「メチル化特異的PCR法(MSP法)」:特定のシトシンの場所のみ調べることができる方法
  • 「 BS-seq」:もう少し広い範囲でシトシンのメチル化を調べることができる方法

などの様々な手法があります。
さらに、ゲノム全体を網羅的に調べる方法として

  • BeadChip
  • 全ゲノムバイサルファイトシークエンス法(WGBS)

があります。こちらもChIPと同様、調べる範囲や精度に合わせて手法を使い分ける必要があります。

この節から学ぶこと

  • どの細胞にもすべて共通のDNAが含まれている
  • 遺伝子の使い分けに関する情報がエピゲノム

どの細胞のDNAもすべて同一

前の節では、遺伝子とゲノムの違いについて解説しました。

【DNAはどの細胞でも同一】

ここで、重要なことを覚えておく必要があります。 それは、一人のヒト・一匹の動物・一本の植物など一つの個体では、どの細胞にもまったく同一のDNAが入っているということです。つまり、まったく同じゲノムが含まれています。 例えば、筋肉の細胞・神経の細胞・皮膚の細胞では、見た目も機能も全く違いますが、その中にある遺伝子はすべて共通しているということです。

【細胞の種類ごとに使うタンパク質は違う】

細胞は種類によって働きが異なり、その働きのために必要な機能をもつタンパク質を使います。ですから、それぞれの細胞が作り出すタンパク質は、細胞の種類ごとに別なものということになります。 例えば、筋肉細胞は「アクチン」と「ミオシン」という2種類のタンパク質を作り出しますが、「ヘモグロビン」というタンパク質は作りません。もし、筋肉細胞ではヘモグロビンがあっても意味がなく、もしあったら害を及ぼしてしまうかもしれません。 しかし、筋肉細胞のDNAは赤血球のDNAとまったく同一であって、筋肉細胞はヘモグロビンを作るための遺伝子も、そのDNAの中に持ち続けているのです。

遺伝子の使い分け

【細胞の種類によって使う遺伝子が違う】

筋肉・神経・皮膚・・・、身体のどの細胞も同じDNAをもっています。 同じDNAをもっているということは、どの細胞もすべてのタンパク質のための遺伝子をもっているはずです。それなのに、筋肉・神経・皮膚の細胞が作り出すタンパク質は、それぞれの細胞に必要な異なるタンパク質です。

これは、逆に言うと、筋肉細胞では 「アクチン」と「ミオシン」を作るための遺伝子は働くが、「ヘモグロビン」を作るための遺伝子は働かないということです。つまり、ひとつの細胞の中で、ある遺伝子は働かせある遺伝子は働かせないという「遺伝子の使い分け」が行われているということなのです。

その「遺伝子の使い分け」に関する情報がエピゲノムです。エピゲノムを知ることで遺伝子の使い方、 つまり細胞の中で何が起きているのかが理解できるようになるのです。

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