[エピゲノム入門]3-2. クロマチン構造の変化とRNA合成

このページから学ぶこと

・ヒストンに目印がついてクロマチンをほどく

・次にDNAに転写因子というタンパク質が結合してRNAが合成される

・これらはエピゲノムとして解析できる

遺伝子が発現するまでの最初の2ステップ

DNAはヒストンに巻きついており、さらに高密度に集まった「クロマチン」の状態で細胞の核の中に存在しています。遺伝子が発現する、つまりDNAからRNAに転写されてタンパク質に翻訳されるためには、まずクロマチンをほどいてRNAを合成する必要があります。

この記事では、「クロマチンをほどく」ステップと、「RNAを合成する」ステップの2つに分けて解説します。

クロマチンをほどく

DNAが巻きついているヒストンからは、尻尾のようなものが出ています。これを「ヒストンテール」といいます。ヒストンテールにさまざまな「目印」が付くことで、クロマチンがほどけたり、逆に強固にほどけにくくなったりします。を調べる方法の一つです。

代表的な目印を紹介します。まず、「アセチル基(Ac)」です。アセチル基がヒストンテールにくっつくことを「アセチル化」といいます。アセチル化が起きるとDNAがほどける、いわば裸の状態になってRNAが合成されやすくなります。

もう一つの代表的な目印は「メチル基(Me)」で、メチル基がヒストンテールにくっつくことを「メチル化」といいます。ただメチル化の機能はやや複雑で、ヒストンテールのどの場所がメチル化されるかによって、DNAがほどけるか、より強固に巻きつくか変わります。例えば、ヒストンテールの端から4番目のアミノ酸がメチル化されるとDNAはほどけ、端から9番目のアミノ酸がメチル化されるとクロマチンは強固に凝集されてDNAがほどけにくくなります。

他にも、「リン酸化」や「ユビキチン化」など、別の目印が付くことによってもDNAのほどけ具合が変わります。これらの目印の組み合わせが、特定のDNA領域(遺伝子)に対応して遺伝子発現を制御しているのではないかと考えることを「ヒストンコード仮説」といい、現在でも研究が進められています。

ヒストンテールだけでなく、DNA自身もメチル化されて転写のされやすさが変わることがわかっています。特に、シトシンとグアニンが隣り合う配列(CG)が高頻度に見られるところのCがメチル化されることで転写が抑えられます。

これらは転写のされやすさが変わる、つまり遺伝子の使い分けに関係することであり、まさにエピゲノムの代表的な現象です。

RNAを合成する

クロマチンがほどけてDNAが裸になってからRNAが合成されるまでに重要な役目を果たしているのが「転写因子」というタンパク質です。

転写因子は、遺伝子よりやや手前のDNA領域(プロモーターやエンハンサーとよばれています)に結合して、RNAを合成するタンパク質「RNAポリメラーゼ」を呼び込みます。

転写因子にも数多くの種類があり、約2000種類にも上ると推定されています。そして、転写因子の種類によってDNAに結合できる場所が異なります。また、1つの転写因子がDNAに結合すればRNA合成が始まるわけではなく、別の転写因子の存在が影響したり、転写因子が結合する場所とは別のDNA領域も影響するなど、かなり複雑な要因が積み重なって転写するかどうか制御されています。

転写因子自体もタンパク質なので、細胞の置かれた環境によって作られる量が変化し、その転写因子に対応する遺伝子の発現も変化する、という関係性があります。体内で24時間周期でさまざまなことが変動する体内時計(概日リズム)も、転写因子の量の増減が関わっています。

2ステップに注目してエピゲノムを調べる

以上、遺伝子が発現するときはまず、ヒストンのアセチル化やメチル化によるクロマチン構造の変化、転写因子の結合という2ステップがあることを解説しました。

現在では、これらのアセチル化やメチル化などを検出できるようになっており、例えばがん細胞と正常な細胞とでこれらの変化を比較するデータも多く取られています。

また、DNA全体でどの場所にヒストンが結合しているのかどうか分析できるため、クロマチン構造の変化もデータとして解析できます。同様に、転写因子が結合しているかどうかもわかります。この解析方法をクロマチン免疫沈降法といい、英語のchromatin immunoprecipitationからChIP(チップ)とよぶことが多くあります。ChIPは、エピゲノムを調べる方法の一つです。

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