[エピゲノム入門]3-1. 遺伝子発現とは何か

このページから学ぶこと

・遺伝子からタンパク質が作られることを「遺伝子発現」という

・遺伝子発現は、時と場合によって遺伝子ごとに異なる

・遺伝子発現の調節のためにRNAがある

遺伝子発現とは、遺伝子からタンパク質が作られること

なぜ遺伝子が生物にとって重要かというと、実際に生物が生きていく上で必要な「タンパク質」というものの設計図であるからです。遺伝子からタンパク質が作られることを「遺伝子発現」といいます。

タンパク質にはいくつもの種類があります。食べ物を分解する消化酵素、赤血球の中で酸素と結合するヘモグロビンなどが想像しやすいのではないでしょうか。他にも、細胞膜に存在して細胞の外にある分子と結合して細胞内部に情報を流す「受容体」と呼ばれる種類のタンパク質や、細胞の形を維持する骨格となるアクチンというタンパク質、筋肉を動かすためのミオシンというタンパク質などがあります。

これらのタンパク質は、必要なときに必要な量だけ作る必要があります。例えば、神経細胞では、筋肉を動かすためのミオシンは必要ないため、ミオシンの設計図となる遺伝子が発現してミオシンが作られることはありません。逆に筋肉細胞では、ミオシンが大量に作られます。また、母親の胎内で体が作られているときと大人とでは、発現する遺伝子の種類は大きく変わります。

すべての細胞がもつ遺伝子は共通です。そのため、どの遺伝子を発現させるかという「調節」が必要不可欠になるのです。どのようにして遺伝子発現を調節しているかというと、遺伝子からタンパク質が作られる間にワンステップを置いています。それが「RNA合成」です。

遺伝子発現を調節するためにRNAを作る

では、遺伝子発現はどのようにおこなわれるのか、順番に解説します。

遺伝子はDNAの一部分として存在しています。DNAは、細胞の「核」という場所に保管されています。重要なものなので、核に大切に閉じ込められています。そこで、核の外側でタンパク質を作るときには、まずRNAというものに遺伝子の情報をコピーします。

DNAからRNAを作るのは細胞の核の中で起きますが、作られたRNAは核の外に出ることができます。このRNAをもとにしてタンパク質が作られます。

このとき、RNAをどれくらい作るか、RNAからタンパク質をどれくらい作るかは、時と場合によって変わります。つまり、RNAを作る量と、そこからタンパク質を作る量を調節することが、遺伝子発現の調節になります。ある遺伝子からRNAが大量に作られればタンパク質も大量に作られますが、RNAがほんの少しわずか作られなければ、タンパク質もほんのわずかしか作られません。

なお、DNAからRNAが作られることを「転写」といいます。DNAにある遺伝子をコピーすることから、そう呼ばれています。そして、RNAからタンパク質が作られることを「翻訳」といいます。なぜ翻訳を呼ぶのかは、この記事の最後で解説します。

DNAとRNAとタンパク質の関係

ここからは、RNAの特徴を紹介します。

RNAは、DNAに似た物質です。4種類の塩基をもち、塩基をもつパーツがつながっている点においては、DNAと共通です。DNAとRNAが異なる点は、次の通りです。

・構成する糖が、DNAはデオキシリボースだかRNAはリボース

・DNAは二重らせん構造だが、RNAは通常1本の紐状として存在する(一部例外がある)

・DNAに含まれる塩基はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)だが、RNAはチミンの代わりにウラシル(T)をもち、AとUがベアとなる

RNAが作られるときは、DNAの塩基配列に対応してRNAが合成されます。例えば、DNAの塩基配列が「ATGCTA」なら、RNAの塩基配列は「UACGAU」になります。

一方。タンパク質は20種類のアミノ酸がつながってできたものです。ところが、RNAの塩基は4種類。RNAの塩基とアミノ酸が1対1の対応では、アミノ酸は4種類しか存在しないことになります。塩基2つでアミノ酸を指定するなら4×4=16種類ですが、塩基3つなら4×4×4=64種類となります。

実際、塩基3つが1組となり、1つのアミノ酸と対応しています。この対応は、ミトコンドリアなどのごく一部の例外を除き、どの生物でも共通です。そのため、ある生物の遺伝子を別の生物のDNAに組み込んでも、同じタンパク質が作られることになります。例えば、糖尿病の薬であるインスリンは、インスリンを作るヒトの遺伝子を大腸菌や酵母に組み込んで作られています。

このように、RNAの塩基配列をタンパク質のアミノ酸に対応させることは、異なる言語を翻訳するように例えることから、RNAからタンパク質が作られることを「翻訳」といいます。

​なお、遺伝子発現という言葉は、転写のみを指す場合もありますが、この解説ではタンパク質が作られること(RNAに転写して翻訳すること)を遺伝子発現と定義します。

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