[お客様インタビュー]東京大学アイソトープ総合センター教授 秋光信佳先生

実際のお客様の声として、過去にRhelixaのエピゲノム解析を用いて論文を発表された東京大学アイソトープ総合センター教授 秋光信佳先生に、弊社代表仲木も同席してお話を伺いました。

高い専門性がレリクサを選んだ理由

――早速ですが、主とされているご研究を教えてください。
遺伝子の集まり全てを総称してゲノムというのですが、その働きを調べるのが僕の専門ですね。特に、がんや自然免疫といった現象において、働く遺伝子を分子レベルで調べるのが私の研究です。

――研究のどのような場面でレリクサを活用頂いたのでしょうか。

先程言った分子レベルで調べる際にサポートをしてもらいました。ゲノムは人の場合、A,G,C,Tというアルファベットでシンボルされる塩基対が30億個ほどあるんです。本に例えると、アルファベットが30億個並んでいる本があって、その本の中に遺伝子という形で単語があったり、フレーズがあったりするイメージですね。

それで、それぞれのフレーズや意味の働きを分子レベルで調べて行くのですが、その際に沢山の塩基対の中から意味のあるシンボルやフレーズを見つけ出す必要があります。ここで、レリクサさんの強みであるバイオインフォマティクスの技術がすごく有効なんですね。

先程の例えでいうなら、一冊の本の中にアルファベットがズラリとあって、その中から意味のあるフレーズを取ろうとしたときに、何かしらの指標が必要ですよね。例えば、コンマがあったらそこまでね、とか、ピリオドがあったらそこまでね、とか、大文字で始まっていたらセンテンスの始まりか、固有名詞か、といったことです。そうしたいくつかの目印となるような指標をうまく組み合わせて、私が興味のあるようなフレーズをレリクサさんが本の中から検索して来る、というようなことだと言っていいと思います。少し話を簡略化しすぎたかも知れないですが。

仲木: いやいや、でもそういうことです。

――秋光先生はいつ頃からこうした研究をされていますか。

何を区切りにするかは難しいですけど、経歴としては大学を卒業後に助教を経て、海外留学から戻ってきてからはつくばの産総研に就職し、2005年から現職をしていますので、もう10年以上はこういった研究をしていることになります。

――それ以前は別の分野の研究をされていたんでしょうか。

そうです。以前はDNA複製や細胞周期、癌の原因となるような生命現象を研究していました。ヨーロッパに留学した際に転機があって、その時に研究室でやっていたテーマや、セミナーで色々な方が来て話してくださった内容で面白そうだな、と思った研究分野が今やっているゲノムに隠されているフレーズ、暗号を解読する研究だったんです。

もともとDNA複製や細胞周期の研究をしていましたから、今の研究ともちろん近い分野ではありました。細胞周期は突き詰めて行けば1個のDNAが2個になるというものなので、ゲノム関連の研究は実は昔からやっていました。ですが、留学したときから、「ゲノムの働きそのもの」を研究し始めたんですね。そうなると、30億塩基という膨大なデータを見ることになりました。先程も言いましたけど30億のアルファベットがあるようなものですから、本にするとそれこそすごい電話帳みたいなものが何十冊となるようなボリュームなんですよ。

そのような膨大なボリュームの中から重要なフレーズを抽出、検索しようとすると、ゲノムにインデックスがついている訳ではないので、目でずーっと見ていっても何十冊もある本1日や2日では読み終わりません。しかも、人間が読んだら前のほうは忘れちゃったりします。そういうところで、コンピューターを使って検索、処理していくというのが大事になってきたんです。Rhelixaさんは検索をするときの技術であったり、ノウハウをお持ちなので、そういったことをサポートして頂いてます。

――そのお話からなのですが、いつ頃からレリクサにご依頼頂いているのでしょうか。またそれ以前はどうされていたのでしょうか。

3、4年前くらいからだと思います。それ以前は会社にお願いしていたわけではなくて、研究者仲間としてやっていました。でも、僕らが求めるスピード感であったり、作業の最適化という観点で考えたときに、レリクサさんにお願いしてみようということになりました。

仲木: 一緒に研究をするメリットというのは沢山あるんですけど、一方でこうしたバイオインフォマティクスの部分を専門にされている方はあまり多くないですね。

そこで、専門性の高いレリクサさんという会社があるならそこに依頼しようと。仲木さんはこの分野への専門性が高いので、安心して仕事を頼めます。仕事として依頼する以上、こちらのニーズに寄り添ってくれますし、研究を進める上でも進捗状況を計算しやすいんです。

仲木: 研究者の成果って基本的には論文ですから、それに半年かかるか2年かかるか、ということが明確にわかるのはすごく重要なことなんですね。

――専門性が高いとおっしゃりましたが、どういったところでそう感じられるのでしょうか。

色々細々としたこともあるんですけど、僕が「こういったことをやってみたい」というとレリクサさんの方から「こうしたら良いんじゃないですか」って具体的なアドバイスをくださったりするので、ありがたいなと思っています。私の望んでいる解析の意図を汲み取って、速やかにやってくださるので、そういう意味で専門性が高いと思います 。

 

絞り込みのプロへの分業でワークフローが改善

――もう少し具体的なワークフローをお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか。

具体的には次世代シーケンサーという機械を使ってゲノムの情報を手に入れるんです。正確にはゲノムそのものというよりは、ゲノムから作り出されるRNAの情報が沢山手に入ります。その何十億という塩基の並びをコンピューターを使って解析していきます。

例えば、サルモネラ菌に人間が感染した時に、感染された細胞は黙ってやられるがままというわけではなく、当然抵抗をします。その抵抗の一つとしてゲノムの中に眠っていた遺伝子を活性化させて、RNAを色々作り出すわけなんです。その時に、どのようなRNAが働いているのかをレリクサさんに調べてもらって、例えば「このRNAがすごくたくさん出るようになりました」という結果を得たりとか、あるいはRNAのパターンの違いを調べることで遺伝子の働きを解き明かしていく材料にしたり、といった部分をお願いしています。

細胞が感染に対して抵抗する時に、ある遺伝子がどのような働きをするのかを調べる時、片っ端からやっていくわけにはいきませんので、レリクサさんと一緒に調べる対象を絞り込んでいくわけです。


――絞り込んでいく作業はどのくらいの時間がかかるものでしょうか。

結構やり取りをするので、それなりにはかかりますね。一週間で答えが出るようなケースもあれば、何回も何回もやりとりをして、少しずつ絞り込んでいく時もあります。

――そうした作業の時は先生が レリクサに行かれたりするのでしょうか。

私は行ったことがないですね。

――遠隔でできるということですか。

もちろん、最低限のやり取りは必要ですが、解析作業は遠隔でお願いできるので、私はその間に他のことを進めています。

仲木: そうですね。基本的にはデータのやりとりが中心になりますので、電話会議やWeb会議でも進められます。

――研究のスピードアップに繋がっていると。

その通りです。

仲木: 実際、一発で全てが上手くいくなら一番いいのですが、そのようなことばかりではありません。それらしい穴は結構あっても、実際掘ってみると違うな、とか、ここはもうちょっとだな、とか。都度話し合いをしながら進めていくことになります。

そういう一発で進まない時に色々と話をするじゃないですか。その時に、僕らみたいな実験生物学者がこんなことがやりたいが、できないか、と思うことが多々あるわけです。仲木さんはそうしたこちらの言葉をコンピューターで解析する言葉に置き換えてくれる人なんです。これを上手にやるためには、生物学をやっている人間がどういったことを頭の中でイメージしているか、というのを理解できて、かつ情報解析のスキルもあるという、バイリンガルみたいなことができないといけない。これができる人は本当に貴重です。先程言った専門性が高い、というのは具体的にはこういうところですね。

――翻訳家というか、現地コーディネーターというようなイメージですか。

現地コーディネーターという表現はいいかもしれませんね。ゲノム解析の必要が出てきた時に、それまでコンピューターを使ったことがない、あるいはそんなにスキルが高くない人に「こうしたらどうですか」とか「こんなやり方がありますよ」と、やりたいことをうまく咀嚼して、適切な答えを導き出すのを手伝ってくださいますからね。

仲木: バイリンガルという言い方はすごくわかりやすいなと思っていて、一つの言語だけ使える人は結構いるんです。データを貰ってコマンドを叩いて、情報解析だけをやれる人は結構いるんですよ。ただ、その情報を使って違う言語の人と話せるかというと、それはまた別の話になります。両方をわかった上で「この手法で行きましょう」と提案できる人は、特に我々の分野では少ないのではないでしょうか。

――研究のスピードアップという話に戻りますが、レリクサ社がいるのといないのとでは研究の進捗はぜんぜん違ってくるのですか。

私はそうでしたね。去年レリクサさんに色々手伝って頂けたおかげで、論文も無事に仕上げて発表することもできましたし、他の研究も今進めることが出来ているので。レリクサさんがいなかったら、膨大な時間とエネルギーを注がなければいけませんでした。

仲木: 先生はバイオロジストなので、解析のテクニカルなところで迷っている時間はもったいないと思うんです。そういったところは我々に任せて頂いて、先生はバイオロジーで詰めないと行けないところに集中して頂く、というのが研究の理想の形だと思っています。

先程も言ったように、色んな提案もしてくださいますしね。例えば、一緒にやっているものの中に熱ショックという、人間の体が熱を浴びた時に、やけどをさせないための仕組みが細胞の中にあります。その仕組みを調べる時に、最初は僕らが聞きかじって来たマックスという方法で怪しい遺伝子を見つけようとしたら、上手くいかなかったんです。そこでレリクサさんに相談をしたところ、もっと良いやり方があります。こちらのほうが良いんじゃないですか、と教えてもらって、実際にそれでやってみると見事に目的遺伝子を見つけることが出来ました。専門性の高い方からこのような提案を貰えるのは、本当にありがたいことです。

仲木: 僕は言ってみれば絞り込んでいくことのプロです。その上で何をどうやって絞り込むか、ということについては色々な先生と仕事をさせて頂きながら、ノウハウを蓄積していっています。

――お話を伺っていて、答えがあるけどなぜそうなるかわからない、そういったところを探していくのはすごくワクワクすることだろうなと感じます。

いや、本当にそうですよ。それだけでやっていると言っても過言ではないです。

仲木: 生物学はどんな研究でも全てそうで、現実には起こっているんです。眼の前で起こっていることを、どのようにして解き明かしていくか、ということなんですね。

――どうアプローチしていくか、というお話なんですね。もう少し研究の進め方について伺ってもいいでしょうか。

例えば、先程の熱ショックの場合だと、解析の部分はレリクサさんとやらせてもらいましたが、細胞や動物そのものを使った実験であったり、細胞からタンパク質だけを取ってきてその働きを詳細に調べたり、いくつかやりようがあるんです。ですから、専門の方と組みながらチームとして互いに専門性を発揮して、何かの生命現象を明らかにする、というパターンが多いですね。僕も専門とは直接関係のない分野を手伝うこともあります。つまり、チーム作業が多いんです。

――その中でレリクサが入ってくるのは先生にとっても業務改善になると。

そうですね。チームの一員として重要なスキルを持っている仲間だと認識しています。

仲木: 我々は絞り込むまでが仕事なんです。そこから先はバイオロジーで詰めていかなければいけないので、我々には出来ないところです。

――うまい具合に分担して進めていくということですか。

そうですね。ただきれいに住み分けられるとは限らないので、相互作用というか話し合いながら「ここまでで終わりだと思っていたけど、こういうこともわかったのでもうちょっと調べてみてください」といったこともあります。

――そうして調べた結果というのはどうやって受け渡しされるのでしょうか。

基本的にはコンピューター上の表データです。

――それを解釈して研究の方向付けをされるのが先生の仕事なんですね。

そうそう。結果を見ながらディスカッションをして、こういうところから目をつけていくのが良いんじゃないか、といったことですね。

それと、僕とやっているときにはあまりお願いはしなかったんですけど、論文で発表する時に使う絵なども仲木さんは非常に上手に描けますよね。

仲木: そうですね。図版も作っています。

これが意外と大事で。人にわかりやすい図版を作るのって難しいんですよ。そこで、色使いやレイアウトも含めて分かり易くやってくださるそうです。

仲木: やっぱり論文って見え方、見せ方が非常に大事になってくるので、図版を見ただけでストーリーがわかるとか、何をやっているかがわかる、というのはとても重要な要素だと思います。

図版も全部白黒だった場合と、色がついている場合ではわかりやすさが全然違うんですね。白黒では説明を読みながらこれがこれ、という風に要素を咀嚼していかなければいけないので頭のリソースを持っていかれます。でも色をつけると、人間パターン認識は比較的得意なので、これとこれは一緒ね、というような感じでスッと入ってくる。そういう意味で見栄えとかデザインはすごく大事で、仲木さんはおしゃれだからデザインにも長けていらっしゃる(笑)。

仲木: お恥ずかしいですけど、とても大事にしています(笑)。

そういったところも含めて、やはりレリクサさんが入ると出てくる論文の質はぜんぜん違うものになってきますね。

 

今後の研究を見据えて

――次世代シーケンサーを用いた解析費用が安くなってきたと聞きましたが、企業に依頼するという方針に変わりはないのでしょうか。

そうですね。次世代シーケンサーのデータ自体を出すところの値段は安くなって来ていますけど、その後の解析の手間が軽くなっているわけではないので。

仲木: むしろ安くなっていることによって色々なことが出来るようになってきています。沢山のデータが安く取れるので、あんなこともこんなことも出来る、と。

それに加えて解析のアルゴリズムも日々開発、アップデートされているので、これについていくのは大変でしょうね。

――例えばなのですが、そうした解析を行っても絞り込めなかった、という判断になることはあるのでしょうか。

それは難しいですよね。どこにエンドポイントを置くかというのはケースバイケースで、最初僕たちはここだと思っていたけど、もうちょっと深掘りしてみたい、といったこともあります。そこは研究者のカンや、研究に対する思い入れで決まってくるので、一概にどこまでというのは言えないですね。

仲木: 言えないと思いますね。でも確かに想定した結果が出ないことは当然あり得ます。ただ、今の技術だったらここまでしかできないという範疇はもう心得ているので、ある程度の部分までやって出来なければ、別の方向を考えた方が良いよね、という判断はつくと思います。

――これまでのことを踏まえた時、レリクサにご依頼されて良かったと思いますか。

自信を持って言えます。レリクサさんは論文全体のことまで考えて相談に乗ってくれたので、次も頼もうかなと思います。

――最後に、将来的にどういったことをされたいか、その展望をお聞かせください。

僕はもともと薬学出身なので、薬や病気の治療といったところにすごく興味があります。そういったところに役立つような種を核酸の中から探していきたいです。それらをうまく利用して薬に転用していくような研究や、実際に自分の手で薬を創っていきたい、というのが僕の目標です。

――ありがとうございました。

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