「放射線に対する血管の応答メカニズムをビッグデータから読み解く」 東京大学アイソトープ総合センターと株式会社Rhelixa、共同研究を開始

1.発表のポイント:

各種放射線に対する血管の応答メカニズムを解明するため共同研究を開始した。
各種オミックス解析と放射線イメージングによって得られるビッグデータの統合および統合データを用いたAI解析手法を開発した。

新たな放射線医薬品の開発に必要な基盤研究の推進につながることが期待される。

2.発表概要:

この度、東京大学アイソトープ総合センター(所在地:東京都文京区、以下「アイソトープ総合センター」)及び株式会社Rhelixa(所在地:東京都千代田区、以下「Rhelixa」)は、放射線による血管に対する応答メカニズムを、オミックス解析及び放射線イメージングからなる統合データによって明らかにすることを目的とした共同研究契約を締結しました。
放射線は我々にとって身近な存在であり、特に医療の現場において広く利用されています。例えば、PET(Positron Emission Tomography)、或いはCT(Computed Tomography)は放射線を利用した医療検査技術です。近年では、α線放出核種(注1)を利用した画期的な抗がん剤が開発されており、それに続く新たな放射性医薬品の研究開発が国内外で活発に進められています。しかしその反面、放射線は人体に悪影響を及ぼすことも知られています。放射線を安全かつ有効に活用するためには、放射線に対して生体が応答する仕組みを分子レベルで理解することが不可欠です。

放射線に対する細胞の応答は、遺伝子発現、蛋白質産生の変化によって現出され、これをゲノム、エピゲノム、プロテオームなどの各種オミックス解析並びに、放射線イメージングによって統合的に解析する必要があります。特に、イメージングデータと遺伝子発現を制御するエピゲノム情報(注2)の解析によって、放射線照射に対する細胞の応答変化をより詳細に解明することが可能となり、放射性物質のより安全で効果的な利用の実現が期待できることになります。

本共同研究では、体内に取り込まれた放射性同位元素に対して最初に対峙する血管細胞が引き起こすエピゲノム変化に注目し、放射線が人体に与える影響を詳細に解析することを目指します。ゲノムに付与される様々なエピゲノム情報を、次世代シーケンサー(注3)を用いてゲノム全体に渡って取得し、放射線イメージングデータと統合的に解析することにより、放射線被ばくによって細胞に引きおこされる変化を明らかにします。

3.今後の展望:

本共同研究は、血管内皮細胞におけるエピゲノムデータベースの構築に参画したアイソトープ総合センター・和田洋一郎教授と、次世代シーケンサーを用いたエピゲノム解析について高度な技術と知識を持つRhelixa・仲木竜代表取締役社長を中心に進められます。エピゲノムを主とする各種オミックスデータと、アイソトープ総合センターで進められる放射線イメージングデータを統合的に活用した人工知能(AI)による解析手法を新たに開発し、検証します。これらの研究によって、放射線が人体の健康に及ぼす影響を分子レベルで解明し、新しい医薬品や医療技術の開発の促進に貢献することを目指します。

4.問い合わせ先:

東京大学アイソトープ総合センター庶務係 油井 聡
Tel: 03-5841-2881 / E-mail: syomu@ric.u-tokyo.ac.jp
https://www.ric.u-tokyo.ac.jp/

株式会社Rhelixa 管理チーム
Tel: 03-6240-9330 / E-mail: customer-service@rhelixa.co.jp
https://rhelixa.com/

5.用語解説:

注1 α線放出核種放射線はアルファ線(α線)、ベータ線(β線)、ガンマ線(γ線)等に分けられるが、α線を発する放射性核種のこと。α線核種であるラジウム223(223Ra)を利用したゾーフィゴ®は、進行性がんに対する画期的な抗がん剤となっており、今後も半減期が10日以内の、所謂“短寿命”α線放出核種を用いた新たな放射性医薬品の開発が活発になることが予想されている。

注2 エピゲノム生物の設計図である遺伝情報全体をゲノムと呼ぶ。細胞は全ての遺伝情報を常に使用しているわけではなく、その時々に応じてどの遺伝情報を使うか使わないかを変化させている。これは、後天的にゲノムに付与される情報(化学修飾等)によって規定されている。このように後天的にゲノムに施され、遺伝情報の発現の制御に関わる情報を「エピゲノム」という。生まれ持ったゲノム情報とは対照的に、エピゲノムは環境や刺激に応じて多様に変化し、細胞の機能に影響を与える。疾患などにおける細胞の機能異常も、多くの場合エピゲノムの変化に起因している。

注3 次世代シーケンサー最先端のゲノム配列解析装置であり、膨大なゲノム情報或いはエピゲノム情報を高速に解析することができる。次世代シーケンサーのデータ解析には専門的な技術、知識と経験の蓄積が必要である。

https://www.ric.u-tokyo.ac.jp/topics/2018/0904.html

シェア:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です